人工知能が Twitter の「つぶやき」から感染症流行ピークを予測 ｜ SiTest (サイテスト) ブログ

※2017年5月12日に掲載されたCNNニュースの関連記事を受け、一部追記しています。（2017年5月16日）

私たちのネット利用のツールとして、切っても切り離せない存在「 SNS 」。
SNS の情報は私たちの生活に入り込み、今ではユーザー間の娯楽やコミュニティ構築だけでなく、デジタルマーケティングにも深く組み込まれるようになりました。

洪水や地震といった大きな出来事から、肩の痛みや鼻水といった個人的な出来事まで、SNS 上で起きた事柄を共有するユーザーは増えつづけています。

今回の記事は、そういったソーシャルメディアで投稿されるワードのデータを収集し、これから流行する感染症をいち早く察知するシステムの研究についてご紹介します。

皆さんは、インフルエンザなどの感染症は、どうやって情報収集していますでしょうか？
TVニュース、感染症の情報サイト、友人や職場の同僚が感染して慌ててネットなどで調べるなど、それぞれの手段があるかと思います。
流行してから気づいても、時すでに遅し…といったご経験もあるかもしれません。

奈良先端科学技術大学院大学のソーシャル・コンピューティング研究チームが、自然言語処理を中心とした情報技術を用いて、Twitter の投稿内容から感染症が流行するピークを推定する手法を開発しています。

仕組みとしては、のどの痛みや発熱などの12の症状についてそれぞれ数千個のつぶやきを人の手で病気と関連性があるかどうかを分類するところから研究の取り組みが始まりました。
さらに、人工知能の機械学習技術を採用し、病気関連の有無を学習させています。

平成24～27年の約700万件のツイートを分析した結果、医療機関の受診に基づく国調査より約2週間早く、流行のピークや兆候を把握できるようになったとその成果を発表しています。
また、ツイッター利用者の位置情報や投稿内容から、都道府県別のデータ分類や、地域ごとの流行時期予測も可能です。

日経産業新聞の記事によると、この仕組みによって、リアルタイムでインフルエンザの流行状況を予測させる実験では、文脈判断の機能を導入したことで精度が 85％～91％に向上したと紹介されています。

なお、花粉症や感染性胃腸炎など他の感染症にも応用が可能になったことから、2020年をめどに、さまざまな感染症の流行を予測するシステムの実現を目指していることから、その予測精度向上にさらなる期待がかかっていることが伺えます。

ソーシャルメディアは、世界の歴史において最も優れた早期発見システムになる可能性を秘めています。
従来のどの検索エンジンよりも高速かつ機敏で、ユーザーデータへのアクセス能力も優れています。

（画像：インフルくん「インフルエンザ tweet と感染症情報センター調べ」グラフ）
こうしたビッグデータは感染症の流行を予測するのに有効で、上記の予測システムの研究の他に、京都大学デザイン学ユニットが運営する「インフルくん」などもすでに存在しており、多くの人が発信する大量の情報をリアルタイムで把握することが可能です。

日本だけでなく、アメリカでもまた、Twitter のつぶやきデータに期待を寄せています。
今年5月に掲載されたCNNニュースの記事によると、
アメリカノースイースタン大学の研究チームが Twitter を活用し、全米規模でインフルエンザの流行拡大をリアルタイムで予測する方法を開発しました。

研究チームがインフルエンザの流行シーズンで試したところ、6週間先までの発生件数や感染の広がりについての予測が従来のインフルエンザ監視システムにも劣らないほど高い予測水準だったと発表しています。

Twitter の情報伝達の速さは、研究者や開発者の目には新鮮かつ増え続けるデータの宝に映ると言ってもいいでしょう。
システムが認知されてツイート数が増えれば、さらに正確なデータが得られるようになることから、 SNS が情報把握のためだけでなく、予防のための基盤になる日は近いかもしれません。

・奈良先端科学技術大学院大学　ソーシャル・コンピューティング研究室ページ
　http://isw3.naist.jp/Contents/Research/mi-08-ja.html
・日経産業新聞「 Twitter でインフル予測　奈良先端大、感染症全般に拡大へ」
　http://sociocom.jp/img/2017-01-27-nikkei2.jpg
・CNNニュース「ツイートもとにインフルエンザの流行を予測、米大学」
　https://www.cnn.co.jp/tech/35101094.html