人間と対戦するコンピュータ(人工知能)について | SiTest (サイテスト) ブログ

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人間と対戦するコンピュータ(人工知能)について

私が最初に「人工知能」らしき存在に触れたのは、マイクロキャビンという会社が作った「王将」という将棋ソフトでした。
1984年に発売されたこの将棋ゲーム(一説には最初の市販将棋ソフトとも言われています)は「思考回路をもったパソコン相手に対局将棋!」というキャッチコピーで、思考回路=すごく賢い、と短絡的に受け止めた当時の私は、この「王将」で将棋の練習をしようと購入したのですが…

当時の思考ルーチンはまだまだ貧弱で一手を指すのに10分以上平気でかかるうえに恐ろしく弱く、パソコンに将棋の師匠になってもらうという望みは叶いませんでした。

今回のエントリでは人間と対戦するコンピュータ(人工知能)について、その進化の経緯をまとめました。

人間と対戦するコンピュータ(人工知能)

チェス

1912年に、歴史上最初のコンピュータゲームと呼ばれるチェス機械「エル・アヘドレシスタ」が開発されました。
コンピュータチェスの歴史はここから始まっています。
1967年には、「Mac Hack VI」がコンピュータとして初めて人間のチェス選手権に参加し、1996年にはIBMのコンピュータ、「ディープ・ブルー」が世界チャンピオンと対戦し1勝3敗2引き分けという結果でした。
翌年97年にはディープ・ブルーが2勝1敗3引き分けとし勝ち越しています。
現在では複数対局で世界チャンピオンに勝利可能であることから、チェスにおいてはほぼコンピュータが人間に勝っていると言えます。

将棋

コンピュータ将棋は日本と一部のアジア圏でのみ普及しているゲームということもあり、開発はチェスに比べると後発です。
1980年代には市販のゲームソフトとして発売されるものの、人間と対等に対局できるレベルではありませんでした。
しかし1990年の第1回世界コンピュータ将棋選手権では5級程度、2005年のBonanza登場で5段程度と着実に棋力をつけ、2008年にはアマ名人を打ち負かすほどまでになります。

そしてとうとう2010年4月、社団法人情報処理学会は社団法人日本将棋連盟に対し挑戦状を送ります。
情報処理学会が日本将棋連盟に「コンピュータ将棋」で挑戦状

この時点でのコンピュータ将棋の実力はトッププロレベルにまで成長していました。
2011年には「あから2010」が清水女流王将を、2012年には「Puella α(ボンクラーズ)」が第1回電王戦米長日本将棋連盟会長を破り、話題となりました。
2013年の第2回電王戦ではponanza佐藤慎一四段を破り現役のプロ棋士に勝利し、それ以降はコンピュータが人間を圧倒しています。

囲碁

意外なことに、コンピュータ囲碁の研究は海外から始まっており、1969年にアメリカで初めての囲碁プログラムが誕生しています。
この頃のプログラムはようやくルールを把握した程度でしたが、1979年には19×19の正式な盤面で指すことのできるプログラムが登場しました。

1990年代にはアマチュア棋士と同等の実力を持つようになり、1993年にはまだ実力的に劣るものの『モンテカルロ法』をアルゴリズムに応用したプログラムが登場します。
2007年にはモンテカルロ法を改良したアルゴリズム、『モンテカルロ木探索』を実装した「Crazy Stone」が、ハンデ付きではあるもののプロ棋士にも勝利し、10年以内にプロレベルにまで進化しうると評価されました。

ハンデ付きとはいえ、ようやくプロ棋士と渡り合えるようになった囲碁プログラムの開発は活況を迎え、2013年には「電聖戦」が、2014年には「囲碁電王戦」が開催されます。
この頃の囲碁プログラムは、プロ棋士に対しかなりいい勝負をするというところまで成長していたものの、実際勝利するには後10年は待たねばならないと言われていました。

アルファ碁の登場

そんな状況の中、突如登場したのがGoogleの子会社、Google DeepMind社が開発した、ディープラーニングの技術を用いた人工知能「アルファ碁(AlphaGo)」です。
2015年10月にはアルファ碁が中国のトッププロ、ファン フィ二段と対局し5戦全勝し、囲碁関係者を驚かせました。
コンピュータがプロ棋士にハンディキャップ無しで勝利を収めたのはこれが史上初です。
そして2016年3月、「Google DeepMind Challenge Match」が行われ、アルファ碁は大方の予想を覆す形で韓国のトップ棋士、イ・セドル九段に4勝1勝で勝利するという快挙を成し遂げます。

技術的特異点(シンギュラリティ)が現実に?

アルファ碁という囲碁プログラムが10年はかかると言われていたプロ棋士に勝利するという偉業を、1年で達成してしまったことは衝撃的でしたが、この勝利がセンセーショナルに取り上げられたことはもっと大きな理由があります。
アルファ碁のアルゴリズムは、多層構造のニューラルネットワークによる深層学習(ディープラーニング)です。
最初は3000万種類の棋譜を学習することで人間の思考を57%の確率で予測できるようになり、そのうえで自分自身と何3000万局も対戦することで、自ら成長させたそうです。
このアルファ碁が自らを成長させた普遍的な機械学習、深層学習技術の強みは、この技術が用途によらず極めて汎用的に使えるという点で、
あらかじめ設定されたルールに基づき特定分野のみに利用できる「エキスパートシステム」と違い、汎用人工知能の誕生につながるものではないか、という大きな期待が寄せられています。

その一方で、アルファ碁の開発チームでさえ、アルファ碁がどのように石の配置を評価し判断をしているのかを把握できていないことから人工知能が自らを成長させ進化したとき、やがて人間の理解を超えた存在にまでなるのではないか、といった予測までされています。
アルファ碁の勝利は、かつては牧歌的だったテーブルゲームでの知恵比べから一転し、AIの進歩が驚異的なスピードで進み、2045年に起きるとされる技術的特異点(シンギュラリティ)の存在が一気に現実味を帯びてきた出来事でもあったのです。