人工知能による自動運転技術が突きつける倫理的ジレンマについて
これからの季節、お酒の席に招かれる機会も多いのではないでしょうか?
警察庁交通局配布の飲酒運転事故関連統計資料によるとやはり飲酒事故は12月が一番増える時期なのだそうです。
飲酒運転は絶対あってはならないことですが、自動でクルマが自分を家まで送り届けてくれないだろうか、とお酒が好きな人なら我慢しながら一度は考えたことがあるのでは?
自動運転の技術は人工知能による人間と機械の代替が進もうとしている分野の一つで、上記のような空想のみならず社会、メーカー、従事者にとって様々なインパクトをもたらす技術革新として注目されています。
今回は人工知能による自動運転技術とその解決出来ていない社会問題についてまとめました。
現在、自動運転技術の指標となっているのが、米国運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が発表している自動運転システムの自動化レベル分類です。
システムに委ねる機能の自動化の段階ごとに定義付けされており、人工知能が活用された完全自動化のレベルは4とされています。
レベル0
ドライバーが常に全ての主要操作(ハンドル・アクセル・ブレーキ)を行う運転。ヘッドライトの自動点灯・自動ワイパーなどはここに含まれます。
レベル1
従来ドライバーが行う主要操作(ハンドル・アクセル・ブレーキ)のうちいずれかをシステムが行う(サポートする)。衝突被害軽減ブレーキなどの技術がここに含まれます。
レベル2
従来ドライバーが行う主要操作(ハンドル・アクセル・ブレーキ)のうち複数の操作をシステムが行う。車線逸脱防止支援機能、クルーズコントロールなどがここに含まれます。
このレベル2までの自動運転システムはすでに実用化されており、現在の市販の自動車に導入されています。
レベル3
従来ドライバーが行っていた主要操作(ハンドル・アクセル・ブレーキ)の全てを自動的にシステムが行い、通常はドライバーは運転せずにすみますが、システムからの要請によってドライバーは運転操作を引き継ぐ必要があります。
レベル3では運転中の事故の責任はドライバーに科せられます。
2016年8月24日発売の日産セレナでプロパイロットとして導入されました。(ただし自動車専用道走行中の機能に限定しています)
高速道路での、単調な“渋滞走行”と長時間の“巡航走行”。
セレナのプロパイロットは、この2つのシーンで、ドライバーに代わってアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動で制御。
高速道路の運転で感じていたあのイライラやストレスが大幅に減るので、家族でのロングドライブが、これまで以上に楽しみになります。
出典:http://www2.nissan.co.jp/
(セレナの自動運転技術をレベル2と定義しているメディアもありますが、引用した日産自動車の機能説明によると限定的なレベル3技術となります)
なおNHTSAは、Googleが開発を行っている自動運転車を、レベル3自動運転システムの代表例としています。
レベル4
従来ドライバーが行っていた主要操作(ハンドル・アクセル・ブレーキ)の全てを自動的にシステムが行い、安全に関わる全てはシステムに委ねられます。
有人・無人運転の両方のケースがありますが、公道以外の限定環境で運用されているにとどまり、現在公道を走れる市販車は存在していません。
今後の展開はどうなる?
漸く日本でも限定的ではありますがレベル3までの市販車が登場した自動運転技術ですが、これからはどのような展開が予想されるのでしょうか
MS&ADグループが2016年6月、普通免許保持者1,000サンプルを対象に行なった調査(MS&ADグループ、「自動運転車および公道実証実験に関する消費者の意識調査」を実施)によると、
消費者の多くは、自動運転車に期待することとして、「交通事故の減少(66.9%)」や「高齢者等の移動支援(50.8%)」、「運転負荷の低減、快適性向上(40.5%)」等をメリットとして挙げています。
その一方で、自動運転システムの操作や故障時の暴走・交通事故など、自動運転技術に対する不安も同時に感じていることがわかります。
「自動運転システム自体の適切な操作(51.9%)」「人通りの多いエリアでの走行(51.0%)」「自動運転システム故障時の暴走・交通事故(50.1%)」等を不安視する回答が多く、やはり機械に完全に命を預けるという不安感は簡単に拭えるものでは無いようです。
機能的には自動運転によって事故は減ると考えられていると同時に、よく理解できない仕組みのため事故への不安をデメリットと考えていることは、決して矛盾する回答ではないでしょう。
自動化により9割9分までの事故を防げる可能性があったとしても、残りの1分の事故が起きるかもしれないと考えることはドライバーにとって極めて自然な感覚です。
自動運転技術が浮き彫りにする人工知能の倫理
また自動運転技術の開発においては、システムによるコントロールで事故が避けられない場合、搭乗者の人間を犠牲にして止まるのか、歩行者・他の走行車にぶつかり搭乗者を守るのか、といった問題を誰が決めるのか、人間でも明確に答えることのできない課題に対してルールを求められます。
これは技術の進歩にかかわらず、人間と人工知能が直面する社会問題です
この問題は自動運転技術のトロッコ問題という道徳的ジレンマとして議論が続けられており、今でも明快な答えを出せずにいます。
参考:Gigazine
「通行人を助けるため運転者を犠牲にするのか?」全自動運転カーは人の命に関わる道徳的ジレンマにどう対応するのか?
「プログラムが人の命を左右する」、全自動運転カーの道徳的ジレンマを解説
上記分類で最高レベルとなるレベル4は、乗員が行き先を決めるだけで運転操作を全く行う必要のない完全自動運転システムの実用化です。
実現は2030年以降になりそうだというのが大方の予想ですが、100%無事故、という技術が絶対に有り得ない以上、人工知能技術の完成の前に倫理的問題が大きな壁として立ちふさがっているように思えます。
最後に
自動車は、人間にとって「歩く、走る、移動する、運ぶ」といった身体機能の拡張する道具の一つでもあり、人工知能による自動運転は、人工知能にある種の身体を与える試みでもあります。
また、人工知能をいかにして社会に溶け込ませることができるのか、人間社会のルールに人工知能のプログラムをどう折り合わせるか、という社会問題を私たちに突きつける社会実験でもあります。
2013年には702種の職業のうち47%が、10~20年後のうちに機械によって代替されると発表されていますが、前述のような社会的合意なくして人工知能が一般的労働の半数を代替できるほど普及することは起こり得ないからです。
参考:THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?
自動運転技術が大きな注目を集めるその背景には、社会的需要、メーカー側の見込んでいる市場、代替されるかもしれない職業運転手の存在以上に、人工知能と倫理的問題という社会問題をどう結論付けるのかという疑問が存在しているのです。
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