多変量テストとは?A/Bテストとの違いやメリット・デメリット、実施方法を解説
- ・Webサイト改善において最適な要素の組み合わせが知りたい
- ・コンバージョン率を高める効率的な方法はあるの?
- ・多変量テストの効果的な使い方を知りたい
Webサイト改善における悩みを持つ人は多くいますが、A/Bテストだけでは改善の糸口が見つけにくいのが現状です。この記事では、多変量テストとA/Bテストの違い、メリット・デメリット、期待できる効果、効果的な要素などを解説します。記事を読めば、多変量テストを自社のサイト改善に応用できます。
多変量テストとは要素間の相互作用を解明し、コンバージョンを最大化する手法です。サイトの改善を成功させるには、適切なテスト設計とデータにもとづいた冷静な分析が欠かせません。
目次
- 多変量テストとは同時に複数の要素を検証すること
- A/Bテストと多変量テストの違い
- 多変量テストで期待できる効果
- 多変量テストに効果的な要素
- 多変量テストのメリット
- 多変量テストのデメリット
- 多変量テストの実施方法
- 多変量テストの結果を分析する方法
- 多変量テストに活用できるツール
- まとめ
多変量テストとは同時に複数の要素を検証すること
多変量テストは、Webサイトやアプリを改善する際に、異なるパターンの要素の組み合わせを同時に検証する手法です。各要素(見出し・画像・ボタンなど)間の相互作用がどのように結果に影響するかを把握し、最適な組み合わせを特定できます。多変量テストについて、以下の2点を詳しく解説します。
- ・多変量テストの目的
- ・多変量テストが向いている場面
多変量テストの目的
多変量テストを行う目的は、Webサイトの改善に役立つ、最も効果的な要素の組み合わせを明らかにすることです。多変量テストによって、主に以下のことがわかります。
- ・要素の組み合わせによる影響
- ・各変更箇所の影響度
- ・最良の要素の組み合わせ
- ・最適なデザイン・内容
- ・修正要素の優先順位
多変量テストはより複雑な改善をサポートする手法として、A/Bテストよりも一歩進んだ施策が行えます。
多変量テストが向いている場面
多変量テストは、コンバージョン(成果)につながるWebサイトの要素同士の相互作用を分析したい場合に向いているテストです。複数の要素の最適な組み合わせを探せるため、A/Bテストでは特定が難しい内容も多変量テストでは分析できます。他にも以下のような場面で多変量テストが役立ちます。
- ・成果が求められるページを改善したいとき
- ・Webサイトへの訪問者が多いとき
- ・デザイン・構成を変更するとき
使いやすさなど、ユーザー体験全体を向上させる目的で、変更点をまとめてテストしたいときにも多変量テストが役立ちます。
A/Bテストと多変量テストの違い
A/Bテストと多変量テストはWebサイト改善のためのテスト方法ですが、性質に違いがあります。テストの使用場面は目的やトラフィック量によって選びましょう。以下3点についてA/Bテストと多変量テストの違いを解説します。
- ・定義の違い
- ・目的の違い
- ・適用シーンの違い
» A/Bテストの基本とおすすめのA/Bテストツールを紹介!
定義の違い
A/Bテストと多変量テストでは、一度に変更できる要素の数や組み合わせ方が違います。A/Bテストは、Webページ内の特定の要素や全体のデザインを変えて、2つの案のどちらが良いかを比べる方法です。多変量テストは、複数の要素を同時に変えて、組み合わせが結果に与える影響を分析する方法です。
A/Bテストでは、ボタンの色を「赤にするか」「青にするか」のみ比較します。多変量テストは、複数の部分を一度に変更可能です。見出しが2種類、ボタンの色が3種類、説明文が2種類の場合、12通りのデザインを比較することで、最適な組み合わせを検証できます。
目的の違い
A/Bテストの目的は、特定の変更点が成果に与える影響の検証です。「どちらのデザインが良いか」「どちらの言葉が響くか」といった、明確な問いに答えを見つけるのにA/Bテストは適します。
多変量テストの目的は、Webページなどを構成する複数の要素を同時に変更した際の、最適な要素の組み合わせを探ることです。要素同士の作用や、結果に与える影響を分析したいときに多変量テストが使われます。多変量テストは成果につながる要素の組み合わせや各要素の貢献度など、複雑で複合的な問題を解決します。
適用シーンの違い
A/Bテストと多変量テストは、テストしたい内容やWebサイトの状況によって使い分けましょう。1つの要素にフォーカスした改善ならA/Bテスト、複数の要素の相乗効果まで知りたい場合は多変量テストが適しています。
A/Bテストが向いているのは以下のようなシーンです。
- ・1つの要素を変更して比較したいとき
- ・ページの新デザインと旧デザインで、どちらの成約率が高いか確かめたいとき
- ・バナーやボタンの文言や色の最適解を知りたいとき
以下の場合は多変量テストが向いています。
- ・複数の要素を同時に変更して最適解を見つけたいとき
- ・ページの構成を変えたいが、どの要素を変えればいいかわからないとき
- ・デザインやページのさまざまなパターンを試したいとき
サイトの目的や訪問者数を考慮しながら、最適なテスト手法を選びましょう。
多変量テストで期待できる効果
多変量テストで期待できる効果を以下の項目で詳しく解説します。
- ・コンバージョン率の向上
- ・ユーザビリティの改善
- ・UXデザインの最適化
- ・ファーストビューでの直帰率の低下
- ・ユーザー行動の多面的な分析
コンバージョン率の向上
多変量テストは、Webサイトやアプリのコンバージョン率(目標達成の割合)を高める効果が期待できます。複数の要素を同時にテストすると、最も成果の出る組み合わせを見つけ出せるためです。個別の要素だけを変更するテストでは見過ごしやすい、要素同士が影響し合うことで生まれる効果を多変量テストは明らかにします。
多変量テストで期待できる効果は以下のとおりです。
- ・最適な要素の組み合わせの発見
- ・目標達成に貢献した要素の特定
- ・複数改善による成果の最大化
- ・効果的なデザイン・コピーの方向性の決定
- ・訪問者に対するサイトの最適化
多変量テストのデータにもとづいた改善を進めると、コンバージョン率の向上につながります。
ユーザビリティの改善
多変量テストは、Webサイトの使いやすさ(ユーザビリティ)を向上させる効果が期待できます。サイト内の複数の要素を同時にテストし、ユーザーにとって最もわかりやすく、操作しやすい組み合わせを発見できるからです。
見出し・ボタンの色・説明文などの配置やデザインを一度にテストすることで、どの組み合わせが直感的でわかりやすいか判断できます。使いやすいサイトは、ユーザーの満足度を高めるうえで重要です。
UXデザインの最適化
多変量テストは、Webサイトやアプリを使う人の体験(UX)をより良くするため、デザインの最適化に役立ちます。さまざまなデザインの要素を、多変量テストで同時にいくつも試せるからです。多変量テストによって、最も使い心地の良い組み合わせに辿り着くため、主に以下の改善点を発見できます。
- ・わかりやすいページ構成・順序にする
- ・伝わりやすいコンテンツに工夫する
- ・不快感のないレイアウト・情報提示の仕方にする
- ・特定顧客層への訴求(色・文字・画像)をする
- ・メニューの順序を優先度が高い順にする
- ・直感的で満足度の高いサイトを構築する
ファーストビューでの直帰率の低下
多変量テストは、Webサイトのファーストビューを改善し、直帰率を下げるための有効な手法です。直帰率とは、Webサイトを訪れた人が最初の画面を見て、すぐにページを閉じる割合のことです。多変量テストの活用により、見出し・画像・説明文などを同時に変更し、続きを読みたくなるファーストビューを構築できます。
第一印象が良くなれば「このページには探している情報がありそうだ」「もう少し読んでみたい」と感じてもらいやすくなります。ファーストビューの改善は、ページの滞在時間やコンバージョンにおいて重要な要素です。
ユーザー行動の多面的な分析
多変量テストは、ユーザーがページ上でどのように行動するかを、さまざまな角度から詳しく知るのに役立ちます。ページ内の複数要素の組み合わせが、ユーザーの行動にどのように影響するかを分析できるからです。多変量テストの結果を分析すると以下のことがわかります。
- ・ユーザーのクリックやスクロール、滞在時間の変化
- ・商品購入や問い合わせなど、目的達成への成功率
- ・ページからの離脱率の変化とパターン
- ・異なるページ要素の組み合わせに対するユーザー反応の違い
- ・ユーザーのパフォーマンス指標の比較
多変量テストにより、ユーザーの行動をより深く理解することが可能です。
多変量テストに効果的な要素

多変量テストはWebページの要素間の相互作用を試し、改善効果を得られます。多変量テストに効果的な、以下の要素について解説します。
- ・ページ全体の構成
- ・見出しとCTAの配置
- ・キャッチコピー
- ・画像や動画などのクリエイティブ
- ・本文のトーン
ページ全体の構成
ページ全体の構成は、多変量テストで効果を検証できる要素の一つです。ページの見た目や使い勝手は、ユーザーの滞在時間や行動に直接影響を与えるためです。メインコンテンツとその他エリアの分け方や配置、表示する優先順位、ページのデザインなど、多岐にわたり試しましょう。最適なページ構成を見つけやすくなります。
見出しとCTAの配置
見出しとCTAボタンの配置は、Webサイトの成果に影響する要素の一つです。訪問者が情報を簡単に理解し、クリックや申し込みといった行動を起こしやすくするために、要素の配置が重要です。多変量テストでは、以下の配置パターンを検証しましょう。
- ・見出しの表示場所
- ・CTAボタンの設置場所
- ・見出しとCTAの距離・並び順
- ・複数CTAの並べ方
- ・デバイス別の表示位置
配置をテストすることによって最も効果的な組み合わせを見つければ、Webサイトの目標達成につながる可能性が高まります。
» デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」(外部サイト)
» デジタル庁「レイアウト」(外部サイト)
キャッチコピー
多変量テストでは、ユーザーの心をつかむキャッチコピーを見つけることも重要な目的の一つです。多変量テストを用いると、以下のキャッチコピーの要素を複数同時に試して、最も効果的な組み合わせを発見できます。
- ・言葉・表現
- ・伝えるメリット
- ・長さ・話し方
- ・数字・実績の有無
- ・ターゲットへの言葉選び
キャッチコピーは、Webサイトや広告で最初に目にする言葉であり、ユーザーの興味を引くかどうかを左右します。多変量テストでは、コンバージョン率の高いキャッチコピーも、データにもとづいた検証が可能です。
画像や動画などのクリエイティブ
画像や動画といった見た目の要素も、多変量テストで改善効果を得られる大切な部分です。多変量テストでは、以下のクリエイティブの要素の組み合わせを検証して、成果につながる最適解を調べられます。
- ・商品写真
- ・アイコン
- ・広告バナー
- ・サイト内動画
- ・動画のサムネイル
- ・イラスト
- ・写真の内容
- ・配置・サイズ
- ・色合い・雰囲気
Webサイトの訪問者が最初に目にする情報や、商品の魅力を伝える方法として、画像や動画は重要です。視覚的な印象を最適化し、離脱率の改善やコンバージョン率の向上につなげられるのが、多変量テストのメリットです。
本文のトーン
本文のトーンも、多変量テストで成果を検証できる重要な要素です。多変量テストでは、以下の要素の組み合わせを試しながら、最も良い反応を得られるトーンを検証できます。
- ・言葉遣い
- ・専門用語の有無
- ・文章の調子
- ・一人称
- ・表現(ポジティブやユーモア)
サイトの文章全体の雰囲気や言葉遣いは、ユーザーが受ける印象やその後の行動に影響を与えます。本文のトーンも多変量テストで戦略的にテストすることで、より成果の出るWebサイトが構築可能です。
多変量テストのメリット
多変量テストは、Webサイトの改善を図るうえでメリットが多く有用です。多変量テストの以下のメリットについて解説します。
- ・検証時間が短い
- ・デザインの方向性がわかりやすい
- ・複合的な要素を同時にテストできる
検証時間が短い
多変量テストのメリットの一つは、検証にかかる時間の短縮が期待できることです。一度のテストで、Webサイトなどの複数の部分(要素)と変更パターンをまとめて試せるからです。A/Bテストのように、多変量テストは1つずつ変更して何度もテストを繰り返す必要がありません。
多変量テストは、要素間の相互作用評価を含めても一度のテストで検証が可能です。多数の変更案を比べる場合も、多変量テストは効率よく最適な組み合わせを見つけられます。多変量テストは、最適なデザインやメッセージを早く見つけたい場合に役立ちます。
デザインの方向性がわかりやすい
多変量テストを行うと、Webサイトやアプリのデザインの改善点について方向性が明確化します。複数のデザイン要素を同時にテストし、目標達成に貢献する最適な組み合わせをデータで確認できるためです。具体的な根拠にもとづくデザインの改善の見通しが立てられ、説得力が増します。
多変量テストによって、効果的なデザインの形や影響度の高いデザイン要素、要素間の相乗効果などが明らかになります。
複合的な要素を同時にテストできる
多変量テストのメリットの一つは、ページの複数の要素を一度にテストできる点です。見出しや画像、ボタンなどの異なる部分の変更による相互作用と効果を同時に確かめられます。
多変量テストで、同時に検証できる要素の例は以下のとおりです。
- ・見出しの文言やテキストサイズ
- ・画像や動画の内容
- ・ボタンの文言と色
- ・説明文の長さや構成
- ・見出し構成を配置する順番
要素単体ではわからないような、ページ全体の効果的なデザインやレイアウトを見つけ出すために、多変量テストは有効です。
多変量テストのデメリット
多変量テストには、多くの組み合わせを一度にテストできるメリットはありますが、実施にあたっては注意すべき点もあります。多変量テストのデメリットは以下のとおりです。
- ・トラフィックが必要になる
- ・統計的知識が必要になる
- ・実施コストが増加する
トラフィックが必要になる
多変量テストを行う際のデメリットの一つは、多数のアクセス(トラフィック)が必要になる点です。最も成果につながる組み合わせを正しく判断するには、各組み合わせで一定以上の成果に関するデータ量が必要になるからです。
多変量テストで試す組み合わせの数が多いほど、必要な全体のアクセス数も増加します。多変量テストを成功させるには、十分なアクセスが見込めるWebサイトであることが重要です。
統計的知識が必要になる
多変量テストの結果を正しく解釈するには、統計に関する知識が必要です。多くの組み合わせを同時に試すため、多変量テストで得られた結果を科学的に判断する必要があります。
多変量テストの結果を分析するためには、以下の基本的な統計の知識が求められます。
- ・統計的有意性、p値
- ・信頼区間
- ・サンプルサイズ計算
- ・分散分析(ANOVA)
- ・多重比較
- ・効果量
- ・仮説検定
多変量テストは高度な検証手法である分、テスト設計と分析の両方で正しい理解が重要です。
実施コストが増加する
多変量テストは、実施にさまざまなコストがかかる点もデメリットです。複数の要素を組み合わせたパターンを多数用意し、同時に検証・分析する必要があるからです。
多変量テストはツールや制作、人材、学習、集客の面でコストが増加することを理解しておきましょう。A/Bテストよりも効果的な手法である一方で、多変量テストは準備と実施にリソースが必要です。
多変量テストの実施方法
多変量テストの実施方法を、以下で詳しく解説します。
- ・コンバージョンの目標を設定する
- ・テストに適したページを選ぶ
- ・変数を適切な数に抑える
- ・必要なトラフィックを推測する
コンバージョンの目標を設定する
多変量テストを始める前に、コンバージョンの目標を設定することが重要です。目標が明確になれば、良好なテスト結果を正しく判断でき、改善に向けた次の行動を決められるためです。多変量テストの目標設定では、以下の点を明らかにしましょう。
- ・最終的な成果
- ・中間指標(KPI)
- ・ユーザーの行動
- ・現状のコンバージョン率(ベースライン)
- ・テストの目標数値
- ・分析ツールの設定
事前に目標を決めておくことで、多変量テストの方向性が定まり効果的な検証を進められます。
テストに適したページを選ぶ
多変量テストで良い結果を得るには、テストするページを慎重に選ぶことが大切です。テストするページによって、結果のわかりやすさや改善効果が異なるからです。アクセス数が多いページや成約ポイントに近いページなどが多変量テストに適しています。
重要度が高いページや、変更箇所の多いページを選ぶことも多変量テストにおすすめです。条件に合うページでテストを行い、信頼できるデータを入手できれば、Webサイトの効果的な改善につなげられます。
変数を適切な数に抑える
多変量テストでは、検証する要素(変数)を適切に抑えることが大切です。変数が多いほど、結果に影響を与えた要素がわかりにくくなるためです。変数を絞り込むには、テストの目的に関連する要素のみ選び、各要素のデザインパターンは最小限にします。
多変量テストでは、仮説にもとづいて効果が出そうな要素を優先し、他の要素はテスト対象から外す判断も必要です。一度に多くの要素を試すのではなく、テストの目的に応じて変数を適切に選択し、結果の分析を簡単にすることも考慮しましょう。
変数を管理可能な範囲内に抑えると、多変量テストの結果を正しく理解しやすくなります。
必要なトラフィックを推測する
多変量テストを成功させるには、事前に必要なWebサイトへの訪問者数(トラフィック量)を推測することが大切です。訪問者数が少なければ、裏付けにできるデータ量が足りず、テスト結果から正確な判断がしにくくなります。
必要な訪問者数を推測するには、以下の手順で進めます。
- 1.組み合わせ(パターン)数を絞る
- 2.パターン毎の最低訪問者数を割り出す
- 3.目標達成率と期待改善率を出す
- 4.信頼水準と検出力を高める
- 5.必要訪問者数の計算をする
- 6.テスト期間の見積もりを出す
必要な訪問者数を事前に把握すれば、計画的に多変量テストができます。
多変量テストの結果を分析する方法
多変量テストの結果評価には、データが偶然ではないことの確認が不可欠です。統計的思考を活用して、データから信頼性の高い結論を導き出し、次の改善アクションにつなげるための分析手法が必要です。多変量テストの結果を分析する方法を以下で詳しく解説します。
- ・統計的有意性を確認する
- ・MANOVA(多変量分散分析)を利用する
- ・結果を解釈する
統計的有意性を確認する
多変量テストの分析において、統計的な視点から結果の信頼性を評価することが大切です。テスト結果が偶然ではないと判断するために、p値と呼ばれる指標を用います。
p値は変更の効果が本当にない(帰無仮説が正しい)としたときに、今回のような差が偶然出る確率を示す値です。テストを始める前に「有意水準」という基準値を設定します。有意水準は「このくらいの確率以下なら、偶然ではないと判断する」という基準です。
p値が有意水準よりも大きい場合は、各組み合わせに明確な効果の差はないと判断するのが一般的です。「信頼区間」という指標も合わせて確認すると、効果の大きさの範囲と推定の精度を把握するのに役立ちます。
ただし、テストしたページの訪問者数が少ない場合は、正確な指標は観測できません。多くのテストツールではp値や信頼区間が自動計算されるため、専門的な知識がなくても確認が可能です。
テスト結果の統計学については以下の記事でも詳しく解説しています。
≫ ABテストの有意差とは?テスト結果を統計的有意性で見極める
MANOVA(多変量分散分析)を利用する
MANOVA(多変量分散分析)は、複数の従属変数に対する独立変数の効果を同時に分析できる統計手法です。単純なANOVAと違って、MANOVAは複数の変数間の相関関係も考慮に入れるため、より包括的な分析が可能です。MANOVAを使うと、以下のような統計量を通じて分析結果を評価できます。
- ・Wilks’Lambda
- ・Pillai’sTrace
- ・Hotelling’sTrace
- ・Roy’sLargestRoot
分析の結果、p値が0.05より小さい場合は、独立変数が従属変数群に有意な影響を与えていると判断できます。サンプルサイズが小さい場合は、Pillai’s Traceが他の統計量より信頼性が高いとされています。MANOVAを実施する際に満たすべき前提条件は以下のとおりです。
- ・多変量正規性
- ・共分散行列の同質性
- ・変数間の線形性
- ・多重共線性がないこと
MANOVAで有意な結果が出た場合は、次のステップとして個別のANOVA(一変量分散分析)を行うのが一般的です。ANOVAを行うことにより、強い影響がある従属変数を特定できます。
分析結果を報告する際は、効果量(η²やPartial η²など)も併せて示すことをおすすめします。効果量を表すと統計的有意性だけでなく、実質的な影響の大きさも伝えることが可能です。MANOVAの結果を視覚的に理解するには、プロファイルプロットやバイプロットなどのグラフを活用すると効果的です。
MANOVAの多変量効果が有意でない場合でも、個別の従属変数では有意差が見られる場合があるので注意しましょう。個別の従属変数で有意差が見られる場合には、結果の解釈に注意が必要です。
結果を解釈する
多変量テストでは、分析結果の数字の意味を正しく読み解くことが大切です。テスト結果をWebサイトなどの改善につなげるには、結果につながった理由や影響した要素を深く理解する必要があるからです。
統計的に出た結果が、ビジネスの目標達成やユーザーの行動にどう影響したかを考えることで、改善につなげられます。以下の視点で結果を解釈しましょう。
- ・成果の出た組み合わせ
- ・要素単独の影響
- ・要素間の相互作用
- ・統計的有意差
- ・目標への貢献度
- ・顧客セグメント別の反応
- ・顧客インサイト
- ・次のアクション
注意深く結果を分析すれば、多変量テストから最大限に改善点を引き出せます。
多変量テストに活用できるツール
多変量テストを効果的に実施するには、目的に合ったツール選びが重要です。使いやすさや分析できる内容、必要な専門知識レベルはツールによって異なります。ツールにはさまざまな種類があり、以下のカテゴリに分けて解説します。
- ・マーケティングやWeb最適化向けのツール
- ・統計解析・データサイエンス向けのツール
- ・ノーコードで使いたい人向けのツール
多変量テストも実施できるおすすめのツールは、以下の記事でも紹介しています。
≫A/Bテストツールのおすすめ11選
マーケティングやWeb最適化向けのツール
マーケティング活動やWebサイトの改善には、便利なツールの活用がおすすめです。ツールを活用すると、Webサイトの改善箇所を調べる多変量テストを専門知識がなくても実施できます。
マーケティングやWeb最適化向けにおすすめのツールは以下のとおりです。
- ・SiTest
- ・DLPO
- ・KARTE Blocks
- ・Kaizen Platform
- ・Ptengine
上記のツールは、A/Bテストや多変量テストを行う機能を持っているものがほとんどです。なかでもSiTestは多変量テストだけでなく、ヒートマップやフォーム分析など、Webサイト改善に役立つ機能が豊富のツールです。
SiTestはユーザー属性ごとにコンテンツを変更する機能もあり、最適なパターンの検証が多方面から分析できます。ノーコードでページ改修やテストを実施でき、初めて多変量テストを導入する方にもおすすめのツールです。
無料トライアルで使い勝手も確認できるので、詳細が気になる方はSiTest公式サイトをご確認ください。
SiTest公式サイト
https://sitest.jp/
統計解析・データサイエンス向けのツール
統計解析やデータサイエンス向けのツールも、多変量テストの結果分析に役立ちます。複雑なデータの扱いや高度な分析手法を用いる場合に、統計解析やデータサイエンス向けのツールは有用です。統計解析・データサイエンス向けに効果的なツールは以下のとおりです。
- ・R
- ・Python
- ・SAS
- ・SPSS
- ・JMP
- ・Stata
Rは統計分析やグラフ作成が得意なプログラミング言語です。世界中の人が作った便利な機能を追加してRを使えます。Pythonはデータ分析でよく使われるプログラミング言語です。データを整理したり、分析したりする便利なツールとしてPythonは利用できます。
SASは高度で専門的な統計分析ができる、企業などで使われることが多い有料のソフトウェアです。SPSSはGUIベースで操作できる有償の統計解析ソフトウェアです。比較的初心者にも扱いやすいインターフェースを持ちますが、SPSSで適切な分析を行うには統計学の基礎知識が欠かせません。
JMPはデータの中から検索したり、グラフでわかりやすく表示したりするのが得意なソフトウェアです。Stataは経済学や社会科学の分野で利用される統計分析ソフトウェアです。専門的なツールを活用すれば、テスト結果の背景にあるより深い意味や、要素間の複雑な関係性を明らかにできます。
まとめ
多変量テストは、Webサイトやアプリの複数要素を同時に変更し、最も効果的な組み合わせを探せる手法です。一つの要素を比較するA/Bテストとは異なり、多変量テストは複数要素の相互作用まで検証できます。多変量テストにより、コンバージョン率の向上やユーザー体験の最適化につながる改善点を発見しやすくなります。
多くの要素を短期間で検証できる点がメリットですが、多変量テストから正確な結果を得るためには多くのアクセス数が必要です。結果分析に専門的な知識が求められる側面もあります。多変量テスト実施の際は明確な目標を設定し、テストするページや変更する要素を慎重に選びましょう。
多変量テストの結果が出たら信ぴょう性を確認し、目標達成に最も貢献した組み合わせを分析することが重要です。Webサイトやアプリを改善するうえで、多変量テストは有効な手段と言えます。適切な計画と分析を行えば、多変量テストによりサイトの改善効果が期待できます。
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