UX(ユーザエクスペリエンス)の歴史
UXという言葉は、一般的にドナルド・ノーマン氏の「誰のためのデザイン」(1990年)から広まっていったと言われることが多いと思います。
世の中にそれより先にあったのは、ユーザビリティ(Usability)という言葉です。
それらの歴史に触れてみたいと思います。
UXの国際規格への導入
前回ご紹介した国際規格から見てみましょう。
国際規格ISO13407により、広く知られるようになったHCD(Human Centered Design)ですが、もともとその目的は、ユーザビリティの確保でした。ユーザビリティはあくまでゴールの達成、効率性、有効性の追求です。
1980年代後半に、ユーザビリティの活動が、盛んになってきた背景があります。
この国際規格の確立は1999年です。そして、ISO13407が改定され、ISO9241-210 (2010年) となりました。このISO9241-210には、UXの概念が導入され、その目的はユーザビリティからUXの実現へ向かうことになります。
(参考引用文献1,2より)
UXやユーザビリティについてのジェフ・サウロ氏の年表
UXについては、様々な人々がそれぞれの考えを持っています。
UX計測の専門家であるジェフ・サウロ氏による「A Brief History of Usability」というユーザビリティの年表があります。この年表は、”ユーザビリティの歴史と未来を形作っているいくつかの重要なイベント、人や出版物のタイムライン”とあります。
この年表は、1911年から始まっています。いくつか、その年表からピックアップしたいと思います。この年表のインフォグラフィック版があり、英語版を購入することも可能です。それはまた、ソシオメディア社によって日本語に訳されているものもあります。(参考引用文献3,4)
1911年、Frederick Taylor氏が時間と作業効率について書かれた
「Principles of Scientific Management」を出版。
1947年、ベル研究所のユーザ・プリファレンス部のJohn E Kalin氏が
現在の電話機のダイヤル方式や数字のキーパッドを完成するのに関わっています。このキーパッドの配列は、自宅や公衆電話、お使いのスマートフォンや携帯電話でもお馴染みですね。
図.公衆電話機とキーパッド
1984年 Apple社がMacintoshを発表しています。
ガイドライン「Designing User Interface Software」も出版されています。
後に読んだ事がある方もおられるかと思います。
この年表には、いくつか見出しがあります。
まず「現代のユーザビリティ専門職の誕生」という見出しで、1988年 – 1993年の出来事が記されています。ちょうど、ユーザビリティが盛んになっていった時期ですね。
1993年、「ユーザビリティエンジニアリング原論」をヤコブ・ニールセン氏が出版しています。
そしてその次の見出しには、「ユーザビリティ成熟」です。その過程が書かれています。
1995年には、ヤコブ・ニールセン氏は useit.com上でコラムの掲載を始めています。これは今でも続いているそうです。
1998年には、「ユーザエクスペリンス」という言葉を題名の中で使用した
「Web Navigation: Designing the user Experience」が出版されています。
2002年以降は、”ユーザビリティはリモートの状態へ”と、リモートユーザテストがWebやクラウド上で行われていくことや、ユーザビティやUXの定性分析や定量分析の書籍について触れられています。
そして現在のUXにおいては様々な方法論や分析方法があり、ビジネス戦略の分野で取り入れられて利用されつつあります。
参考および引用文献
1.ISO13407改訂―HCDの新たな展開のために見直すべきこと/HCD-Net通信 #13
2. 人間の成長とユーザエクスペリエンス 安藤 昌也氏(千葉工業大学工学部)
3.SEのためのUIデザインの教科書 (ソシオメディア 篠原稔和氏,上野学氏 日経BP社)
4.A Brief History Of Usability – Jeff Sauro • February 11, 2013
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